紫吹蘭 VS. 大都市 上大岡(横浜市)
「収録、やけに時間が経ってしまったな……
今日はいちご達と鍋を食べる約束をしていたのに、
よし、早く帰らないとな。」
しかし、紫吹蘭は大都市上大岡に足を踏み入れてしまっていた。
上大岡、それは二子玉川・蒲田と並び関東第三都市を冠する横浜市の産んだ化物ような街。
ベッドタウン特有の停滞した空気が、紫吹蘭のセンセーショナルな感性を刻一刻と蝕んでいく。
「いちご達、もう準備を進めてるみたいだ。
よし、とりあえず……この路地を進んでみるか。
ド田舎を知るなら路地を知れ、基本だな。」
紫吹蘭は知らずに進む……その路地と思い込むほどの薄暗い道が、大都市上大岡の全てである『上大岡中央商店街』であることを。
「なんだ、このTSUTAYA……『死』か?
私の知っているTSUTAYAとは天と地の差だ。
本当にツタを売っている店みたいじゃないか。」
「駄目だ、見てられない! CDコーナーが私の家の
ウォークインクローゼットより狭いじゃないか!
この街の人はこんなところで物を買うのか!?」
(死ぬほどいる……やっぱ死んだ街なんだ……
TSUTAYAしか、娯楽がない街なんだ……)
「ちょっと!山内秀樹(店員の本名)!
このラベル間違えてるんじゃない!?
上大岡TSUTAYAで300円のラベルはおかしいわ!
あなたがドなら私はレ!これが200円ならこれは150円でしょ!」
「…………」
「よかった! ようやく都会っぽいところに出られた!
なんか見た目がそこそこマシに見えるし、なにせ牛角もある。
都会に間違いないな!」
紫吹蘭はさらなる地獄……上大岡 赤い風船へと迷い込む
つづく